北海道の夏は短い。
何しろ初雪が10月なんて年もある訳で、本州以南のように10月が運動会とはならないのである。
北海道では殆どの小・中学校では6月に運動会を行う。
だから10月の体育の日は、北海道人にはピンとこないのである。
ちなみに私は10月10日生まれで、後に東京オリンピックの開催日を記念して”体育の日”として祝日となり、私の誕生日は永遠に祝日となった。
・・・ハズだったが、いつのまにか体育の日は10月の第二月曜日になってしまった!
結局の所、北海道を除きほぼ全国的に、前日の日曜日に運動会を行う所が増え、翌日の休息日が体育の日となったのである。
(”体育の日”より、”体育した次の日”の名称の方が正しいと思うのである)
で、また話が脱線してしまったが、北海道の短い夏は、あらゆるイベント・お祭りが集中する。
お陰様で?私など7月中旬から8月末までで、イベント等に関与してない週末はたったの1回しか無いのである。
(これでは、三男坊を連れて夏のレジャーにすら行けやしない・・・って本当に行く気あるのかって?)
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さて、前話に続いて羊肉の話。
この羊肉ブームで、羊肉を食べる機会が増える事によって、日本人にとっての三大食肉である牛肉・豚肉・鶏肉に、羊肉が普通に加わる布石になるのだろうか?
ちなみに日本の三大食肉の年間家計消費量は、国民一人当たりトップが豚肉で約5200g、鶏肉が約3500g、牛肉が約2500gである。
三品合わせると、一人11.2kgの肉を家庭で消費している。
更に、加工用・外食用に回される三大食肉の合計は、国民一人あたり年間約20kg程で、残さず食べると家計消費と合わせて30kgを超える肉を食べている計算になる。
(この内、3kgがお腹に、2kgが太ももに、1kgが二の腕に保存される事となる!?)
変わって、羊肉はどうかと言うと、家計消費・加工・外食を合わせて、国民1人あたり年間約1kgほどと推測される。加工用を除くと食肉として食べられているのは数100gとなり、北海道のような大消費地を入れての平均であるから、他の都府県によっては消費量は、限りなくゼロとなるのである。
そもそも牛・豚・鶏のような、細かな統計が殆ど見当たらないので、調べるのも大変なのである。
何故ならこの国の畜産制度上、羊には共済・保険制度や補助制度も皆無で、あなたが飼っているイヌ・ネコと同じペット扱いなのである。
(だから日本の場合、羊の多くは観光牧場にいるのである。・・・納得!?)
さて、ジンギスカン店などで”生ラム”と書かれているが、正確に言うと99%は輸入チルド肉である。
マイナス1℃程の凍る寸前の温度でニュージーランドやオーストラリアから輸入されるチルド肉であるが、凍っていないから”生”という表示で堂々と売られている。
実は、冷凍もチルドもしない本当の生ラムとは天と地ほどの味の違いがある。
これは、わがまちのような所でしか口に入れる機会は無いのである。
何しろ上質な物は刺身でも美味しく食べられる。
(さっきペットと言ったばかりなのに、そう言われると食べたくなるのが人情?)
輸入が不可能な真の”生ラム”は貴重な国内産の羊からしか供給できないのである。
国内で、牛は約450万頭、豚は約970万頭飼育されており、羊は世界中に何と約10億頭飼育されている。
片や現在日本で飼育されている羊の頭数といえば、ピーク時の約100万頭から減りに減ってたったの約1万頭程である。
(あなたがもし何か日本一を目指したいなら是非とも1000頭の羊飼いになる事をおすすめする。
断トツの日本一となり、日本の1割の飼育シェアーを持つ事になるのです!
・・・儲かる・儲からないは別の問題です。)
当然だが、この1万頭全てが肉用に出荷される訳では無いので、出荷頭数は更に少なく、冷凍されないで流通する真の生ラムは、ほんの僅かなまぼろしの肉とも言えるのです。
ちなみに、冷凍も含めた国産羊肉を1億2千7百万人の日本人の胃袋に平均に分配すると、一人あたり年間約1gという計算となる。
(何しろ国産羊肉の出荷量は、世界の三大珍味の一つであるフォアグラの輸入量300tよりも少ないからである)
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では、なぜここまで日本の羊は減ってしまったのだろうか?
はっきり言って儲からないからである。
前話で書いた通り、日本の羊肉料理はタダ同然の廃羊肉のジンギスカンから始まったため、羊肉=安い肉というイメージになってしまった。
更に海外からの安い輸入羊肉の影響で、国産高級羊肉でもこのブーム直前までは、売るのに苦労していたのが実態である。
もう、とっくに日本での羊は、動物園や観光牧場でしか見られない存在になっていても、何の不思議も無い状態だったのである
わがまちのように、ごく一部の頑なな生産者によって絶滅危惧種?のような日本の羊は、今まで殆ど日の目を見る事もなく、飼育されてきたのでした。
(いつかは表舞台に!とず〜っと下積み時代を過ごす売れない劇団員の姿と重なる?のである)
そもそも小売価格で、松阪牛などの高級和牛肉に1kgあたり2万円も3万円もお金を出す日本人だが、羊肉は国産ラムでもせいぜい1kgあたり、3千円から4千円である。
そんな訳で、生産農家は1頭出荷しても、3〜5万円位にしかならないが現況なのである。
しかも、1回の出産で10頭もの子を産む豚に比べ、羊は双子が混じるくらいで、平均すると1.3頭〜1.5頭程しか出産しない。
また2年育てると400kgを超える枝肉が取れる牛と比べて、羊は早熟なサフォーク種のラムでさえ30kgの枝肉が取れれば良い方である。
(この効率の悪さはいかんしがたく、水を飲んでも太る?誰かさんのようにはいかないのである)
その上羊毛は、海外から安価に輸入される上に、化学繊維に完全に押され、国産羊毛の需要の消滅と共に、国内の大手洗毛工場は全滅してしまいました。
現在、国内で刈られた羊毛からわたや糸を作ろうすると、手作業で選別・洗浄等を行うしか術が無いのです。
もはやこの点においては、日本は産業革命以前に戻ってしまいました。
(そもそも、あなたの身の回りにエコロジーな羊毛製品がどれ程あるだろうか?
・・・せいぜいお父さんの背広とお母さんの毛糸のパンツくらいかもしれない)
あなたが羊飼いになったとしてシュミレーションしてみよう。
まず、繁殖用のメス羊を15頭、オス羊を1頭合わせて16頭をタダで預り、羊舎・草地もタダで借りたとして計算する。
飼育して、春先に子羊が20頭生まれ、その後36頭の羊を育てる事となる。
半年後、子羊20頭全部を1頭あたり4万円で出荷したとしも、1年間の売上げはたったの80万円である。
当然、飼料代・薬代等もかかる訳で、利益は限りなく少なくなるのである。
繁殖用の羊を購入していたら、いつ黒字になるか皆目見当もつかないのである。
(これではスーパーでパートをした方が儲かる計算になるのである)
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それでは、どうすれば国産羊の未来が広がるのだろうか?
ひとつは、この羊肉ブームに踊らされる事なく、国産羊肉の良さをもっとピーアールして、安定した需要を増やし、もう少し採算が取れるような単価アップを目指す事である。
ニュージーランド・オーストラリアのような、羊舎も無く1年中放牧して青草で育てる牧草飼育は、殆どコストが掛からず安価な羊肉を提供できる。
変わって、日本で主に行われているのは、干草と穀物で育てる穀物肥育である。
この穀物飼育は日本人の好きな脂が程良く乗り、草のにおいが少ないマイルドなラム肉となる。
脂肪は草の色素が移らないので、純白に近い仕上がりで輸入肉との違いが歴然とするのである。
高級和牛が”霜降り”と言われる脂が赤身に”さし”として入る事にこだわるのも、肉の香りや味の多くは脂で決まるからである。
(それに比べ、”さし”が入っているに違いないあのお父さんの太鼓腹は、な〜んの足しにもならないのである)
この違いは、肉牛の場合は、放牧で育てるあっさりとして脂の少ないオーストラリア牛と、穀物で仕上げる脂の乗ったアメリカ牛との違いと同じ理屈である。
(吉野家がアメリカ牛にこだわり、牛丼の再開が出来ないのは、牧草飼育のオーストラリア牛では、全くコクの無い牛丼になってしまうからだ。
・・・ガンバレ吉野家!)
先ずは、このような味の違いを知ってもらう事に尽きるのである。
安いオージー・ビーフと高級和牛との違いを知って使い分けている日本人である。
違いを分かってもらえば、輸入ラムと良質な国産ラムの無意味な競合は無くなり、道は開ける!と確信するのである。
(今の所、国民一人あたり1gですが・・・)
かと言って、生産農家の現況が一気に好転するとも考えづらい。
わがまちでも当初から言われていた、羊から日夜生産?される排泄物から出来る良質の堆肥づくりと有機農業を通し、循環型農業による付加価値の向上を目指すのも一つの方向かもしれない。
クズ米・豆ガラ・雑草からゴボウの皮まで植物系なら意外と何でも食べてしまう羊。
農業性廃棄物のかなりの物は、その回収ルートさえ確保さえすれば、限りなくタダの羊のエサとなる可能性が高い。
(農業性廃棄物を、高度なバイオマス発電などで利用する為にお金を使うより早いかもしれない)
そうです!そろそろ”羊肉料理=ジンギスカン”の呪縛から日本人を解き放つ時がやって来たのであります!
(って、今日は”羊”とは何の関係も無い
終戦記念日なんだけど・・・)