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2011/02/27
河村たかしと地方自治
 先の愛知県知事選挙の投票日に合わせ、自ら辞任して名古屋市長選をぶつけ、再選を目指した河村たかし氏が圧倒的な得票数で再選された。

 河村氏は、自ら市議会のリーコール運動の先頭に立ち、必要な有効数を超える署名を集め、市議会解散を問う住民投票に持ち込み、知事選・市長選と同日に、その住民投票が行われ、名古屋市民はトリプル投票となった。

 投票終了の午後8時に、圧勝を伝えられた河村氏は、
「どえりゃあ面白い名古屋にする」
「名古屋の名物は手羽先だけじゃない。民主主義を名物にする」・・・
    と河村節炸裂である。
(おみゃあさん、よーけ票を取ったもんじゃ)

 河村氏と共闘し愛知県知事選に立起した前衆院議員の大村秀章氏も圧勝に終わった。

 さらに、名古屋市議会の解散の是非を問う住民投票も、解散賛成票が有効投票の実に73%を占めて、政令指定都市で初めてのリコールが成立した。
(たわけた事しんでほしい・・・と思った市議が殆どだったと思われるが、結果は市議会にとってどえりゃあ事になりより、まっぺん出直しだぎゃ)

 マスコミは一斉に「既成政党」VS「首長新党」とか、既成政党に「ノー」を突きつけた「中京の乱」とか単純分析をしているが・・・
 もうちょこっと分析してちょーせんか

(無理やり使っている名古屋弁、間違いだらけでしょうが、ご指摘は不要だがや)

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 さて、河村氏、大村氏はもとより、大阪の橋下知事など、共通するのは、圧倒的な知名度・群を抜くマスコミへの露出度、そして何よりも究極に単純化した政策である。

 河村氏の場合、
 「住民税の10%削減を恒久化する」
 「市議の報酬を半減!」・・・
など、極度のワンフレーズ政策である。
(思い出せば、こういったワンフレーズ選挙がここ数年少なく無い事に気づく。
    「郵政民営化!」
    「政権交代!」
    「大阪を変えよう!」・・・)

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 少し冷静に考えてみよう。

「住民税10%の減税!」・・・
 この恩恵が大きく感じられるのは、年収1千万円以上の高所得者であろう。
 年収が少なかったり、子育て中の世帯の住民税など、限り無く低いのが日本の住民税の現実である。
 名古屋市の場合、半分を超える市民が市民税の非課税や、扶養家族の関係で減税の対象外である。
(ご自分の給与明細を改めて見て頂きたい。住民税の10%なんて誤差の範囲の方も少なく無いはず・・・
 おみゃあさんに、言われたく無い?)

 法人市民税に至っては、全体の0.2%にあたる高額納税企業が44%の減税額を受け取ったという報告もある。
 これでは超有力企業への優遇税制と一部で揶揄されるのもうなずける。
 自転車で選挙戦を戦うなど庶民派をアピールしている河村氏だが、「この減税は高所得者と超優良企業減税である!」とはっきり言うべきでもある。
(どえりゃあ減税の恩恵を受けたいのなら、どんどん稼いでちょ〜
    と言わんばかりである)

 誰にも聞こえの良い「減税」というワンフーズ戦略は見事に当たったが、この胡散臭ささに名古屋市民や愛知県民は、どこまでご理解されていたのだろうか?
(正に大衆迎合選挙と多くの方がいう訳である)

 今まで通り、皆さんに納税頂いて、必要な所にきちんと使うという考えを他の市長候補者はきちんと伝えたのだろうか?
 減税分の財源確保のため、既存の住民福祉に大ナタを振るわれるのが市民の望みなのだろうか?
 現に、「日本一 福祉・医療・住民自治が行き渡った ナゴヤ」と訴えながら、健康福祉局・子ども青少年局・教育委員会で予算カットを行ってきている。
 市議会も、ただ抵抗している様子しか伝わらず、これらの不条理を市民に伝えきれていない。
 とは言っても、減税は1年限りと議会は一定のチェック機能を果たしたと思うのだが、市民は議会の解散を選んだのである。
   (何ともややこやしいみゃあ)

 同じく愛知県知事に当選した大村氏も「県民税10%減税!」で当選をした。
 高所得者は名古屋市民になると、市民税&県民税ダブル減税である!
 近隣市町村から住所を移す高額所得者もいくらかはいるだろうが、そこから徴収する市民税は、全体の減税額を補うには余りにもわずかなものであろう。
(仮に、私が名古屋市民になって、市民税を補填して上げようにも、高所得者では無いので殆ど効果は無いのである。
 これって、悲しむべき事か、喜ぶべき事か・・・)

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 もう一つの公約「市議報酬、800万円!」・・・

名古屋市議の報酬は年間約1600万円、別途政務調査費もである。
 私も田舎の市議のはしくれをやっているが確かに高すぎると思う。


           UP

 しかしながらいきなり800万円はいかがなものだろう。
 河村市長は、年2500万ほどの自ら市長の報酬を800万とした。
 「市長が800万円なのだから、市議も800万円にしろ!」と言う論理である。
(河村氏は800という数字が何故かお好きらしい・・・
     嘘800もお好きなのか!?)

 さて、市長には公務員である秘書が5名、市長公用車お抱えの運転手が1名などなど全て公費で日々の公務をサポートしてくれる。
 また、市長の交際費や旅費・日当などの出張関連費など、その多くが公費で支えらている。
 つまり市長という職責を全うするための日々の活動費の殆どは、報酬の他に様々と手厚く公費で賄われている。

 一方、市議会議員の場合、政務調査費で許される以外のものは、基本的には全て議員の報酬から支出せざるを得ない。
 政令指定都市である名古屋市議であれば、事務所も必要であるし、専従の事務員も必要となる。
 800万円を15.95ヶ月(人事院勧告)で割ると、月額約50万円となる。
(これだけ聞くと、まだまだ高い!と言われる方が多い・・・)

 さて、そこから源泉税や各種会費を差し引くと、40万円以下は確実で、仮に家賃5万円の事務所と月給10万円の専従事務員、事務所の維持費(水道高熱費・消耗品・通信費など)に5万円かかったとしたら、差し引き残るのは、20万円以下となり、その上、かなりの交際費も掛かる。
 議員だよりでも発行したら、赤字になるのは請け合いである。
 しかも少なからずの選挙費用を掛けているである。
(これが借金なら返済不能である。
  名古屋市の財政改革を目指して議員になったばっかりに自己破産では、笑うに笑えない)

 河村氏の言う、事実上「議員のボランティア化」に限りなく近いものとなり、別途の所得や、資産家、公党などがバックアップしてくれる議員などしか立起出来なくなる可能性もある。
(議員は、志の高い者が、ボランティアで行え!・・・
耳あたりが良く聞こえるが、実際こうなると志だけでは、議員などなれんがね)

 都道府県並の権限を持てる政令指定都市である名古屋市の場合、市議は、兼業議員では殆ど不可能であろう。
 一般会計だけで約1兆円規模、約3万人の市職員を動かす市長側に対して、地方自治法上は対等と言われている議員側が本当に対等に挑み続けるには、相当の知力・勉学・機動力と資金も必要となる。
 225万人都市で、誰が当選しても、専業議員でそれなりに食べて行ける報酬は最低限確保するべきと考えるのである。
 (誰が落とし所を見つけてちょ〜)

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 さて、地方議会が十分にその機能を発揮していない側面が名古屋や阿久根に限らず、ほとんどの議会に少なからずある事が、市民の反発の根底にある事を議会・議員が今以上に認識して改革をして行かなければならない事は、言うまでもない。

 しかしながら、二元代表制の一翼の市長が、もう一方の一翼の議会のリコール運動の音頭を取るのは、通常ありえない事である。
 自らのチェック機関である議会が言う事を聞かないから、市長派議員で固めるために解散をさせるとすれば、二元代表制を根底から否定する事でもある。
 日本の地方議会は、国のような議員内閣制(一元代表制)では無いのである。

 地方議員は首長と別々に選挙で選ばれる事により、議会は首長の政策を是々非々でチェックするのが大きな役割の一つである。
 つまり、地方議員には首長与党も野党も無い。強いていえば全員野党的な立場が最も健全である。
 イエスマン的ないわゆる首長与党議員の多数化を、首長自ら進める事が改革と言えるのであろうか。
 そもそもリコール運動は、市民が自発的に行われるものと想定されているのである。

 殆どの議会が、首長原案の議案を修正無しで可決する事が議会批判の一つとなっているが、首長原案を否決した名古屋市議会がリコールされ、市長は市長容認派議員の過半数を目指すのである。
 議案の内容の是非は別にしても、こんな動きに疑問が無いとしたら、議会制民主主義自体が限りなく否定された事となる。
(市長も議員も極端に報酬を下げて、議員は市長のイエスマンになり、高所得者と超優良企業減税を進めるのが、名古屋市民の圧倒的な総意だという事で理解して良いのだろうか?・・・
      何だかみゃ〜)

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 黙っていても今年4月に改選になる名古屋市議会を、このリコール運動で2ヶ月早めるだけで、4億5千万円掛かったそうである。
 やめなくても良い河村氏の出直し選挙に要した費用などを合わせると、莫大な税金が投入された事となる。

 結果的に、愛知県知事選に全てをぶつけるための河村氏の戦略としては、見事に大成功と言えるだろう。

 民主主義には、相応の対価が掛かる・・・
 とは言われるが、これが一市長の恣意的な行動によるものとすれば、本当に民主主義の対価なのだろうか?

(そんな事より、とろくさい更新だぎゃ)
   

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